複数の関節の痛み – よくご相談いただく症状
関節リウマチについて
関節リウマチの主な病態
関節リウマチは免疫の異常によって関節に炎症が起こり、関節のこわばりや腫れ、痛みが生じる病気です。以前は、「慢性関節リウマチ」と呼ばれていましたが、慢性に経過するのではなく、実際急性発症する例もあり、現在は「関節リウマチ」が正式名称です。進行すると関節の変形や脱臼、強直などがおこって関節機能が障害され、日常動作や日常生活に支障をきたします。
関節リウマチの原因
発症には環境要因と遺伝要因の両方が重要とされています。環境要因としては、喫煙、腸内細菌の変化、歯周病原因菌の感染との関連が指摘されています。ある種の遺伝的背景を持った人に環境要因が加わることにより発症すると考えられています。
関節リウマチの診断
まず、臨床的に関節の腫れがあること、他の病気ではないことを確認します。腫れた関節の数と部位、血液検査でリウマトイド因子や抗CCP抗体などの血清反応の有無、CRPなどの炎症反応を確認し、罹患期間をみて総合的に診断します。大まかには、骨(骨棘)が形成されるのが変形性関節症、骨が溶けて壊れるのが関節リウマチと言えます。
関節リウマチの治療
発症してから約2年間のうちに関節破壊は急激に進むといわれています。また、発症早期は薬の効き目がよいことがわかっています。そのため、近年は早い段階から強力な薬を使って、関節破壊を抑えることが重要と考えられています。患者さんの状態に応じて免疫抑制薬や免疫調整薬、さらには近年登場した生物学的製剤(関節炎や関節の破壊に関係するサイトカインの働きを抑える注射薬)等を組み合わせ、関節炎が治まって関節破壊の進行がない状態(寛解)をめざした薬物療法を行います。個人により薬剤の効果や用量は異なり、薬の調整はある程度の時間を要します。関節炎がある状態で無理なことをすると、関節破壊を助長することもあり得ます。当院では、医師だけでなく薬剤師、看護師、理学療法士、作業療法士など多職種で情報を共有しながら患者さんの治療にあたっています。
関節リウマチの手術
薬物治療やリハビリを行っても、一部の関節に痛みが残ることがあり、また、すでに壊れてしまった関節には薬物治療の効果は及びません。関節リウマチの炎症が薬物治療によってある程度安定している状態で、かつ激しい痛みがあったり、日常生活に支障がある場合、適切な時期に手術を受けることにより、その後の生活がしやすくなります。逆に、時期が遅れると手術が困難になることがあります。患者さんの状態に応じて時期を見極め、痛みを取り除くことと関節の機能を改善することを主な目的として、人工関節置換術、関節形成術、滑膜切除術など各種手術も行っています。
当院では関節リウマチのチーム医療に積極的に取り組んでいますので、疑問・質問等ありましたらお気軽にスタッフにご相談ください。
関節リウマチに対して日常生活で工夫するポイント
関節リウマチは自己免疫疾患の一つで、全国で患者数が70万~80万人と推定されています。前述されているように、関節が炎症を起こし、軟骨や骨が破壊され、関節機能が損なわれ放っておくと関節が変形してしまう病気です。そのため、日常生活動作において関節に負担を出来る限りかけない方法で動作を行うことをおすすめしています。また、関節の腫れや痛み、変形でうまく動作が行えない場合は、道具を用いることで動作が行いやすくなる場合もあります。今回は動作の方法や注意点、自助具の紹介をさせていただきます。
日常生活で関節に負担をかけない動作の工夫
起き上がり動作
※横向きから、前腕で支えながら起きます。
※手をつくときは、手のひらでなく、グーでついて行いましょう。
立ち上がり動作
※支えが必要な時は、座面に手のひらをつくのでなく、グーでついて立ち上がりましょう。またテーブルがある場合は、前腕で支えて立ちあがりましょう。
荷物を持つ動作
※荷物を持って歩くときは、手にぶら下げずに、肘で持つようにしましょう。また、リュックやキャスター付きのカートなどを利用するのも良いでしょう。
手の使い方の工夫
関節リウマチは手指に症状がでる方が多いです。手指に負担がかからない動作にしましょう。
自助具のご紹介
(100円ショップ、ホームセンターで買える自助具)
自助具とは、日常生活で行いにくい動作を行いやすくするために工夫された道具のことです。最近はユニバーサルデザインとして、誰もが使いやすいように工夫された様々な道具もあります。100円ショップやホームセンターで買えるもの、インターネットで買えるもの、介護ショップでしか買えないもの、介護保険が利用できるものなどさまざまです。