福岡県小郡市美鈴が丘の整形外科、リハビリテーション

医療法人オアシス 福岡志恩病院

腰の痛み – よくご相談いただく症状

腰痛に対する最新の治療法

1.腰痛の薬物治療

 腰痛を起こす疾患は多岐にわたり、若い人では腰椎椎間板ヘルニアが多く、高齢者では腰部脊柱管狭窄症が最も多い疾患です。慢性の腰痛に対して、これまでは消炎鎮痛剤の投薬、トリガーポイント注射、温熱療法などが行われてきましたが、最近では消炎鎮痛剤の投与頻度は減り、これに変わってオピオイド系の薬の投与が保険で適応となりました。さらに、様々な新薬が開発されています。このオピオイド系の薬(トラマドール、ブプレノルフィンの1週間持続貼付剤、デュロキセチンなど)は、麻薬と同じような作用で効果を示しますが、麻薬と違って厳しい管理は必要でなく長期投与が可能です。また、長期に服用しても安全で副作用も少なく安心して使用できます。人によっては便秘が起こることがありますが、緩下剤投与でコントロール可能です。

2.腰痛の手術治療

 一方、手術治療も変遷してきた歴史があります。様々な脊椎の手術をなるべく小さな侵襲で行う取り組みがなされています。小侵襲でするということはキズが小さく術後の疼痛が少ない、出血量を少なくできる、術後の回復が早く早期に退院や社会復帰ができることを意味します。また、小侵襲であれば、免疫力や抵抗力が落ちにくいため術後の感染や全身の合併症も少なくすることができます。
 現在、当院で行っている脊椎の小侵襲手術としては内視鏡下椎間板摘出手術(MED)が挙げられます。皮切は1.5cmと小さく、手術侵襲も小さいため術後1週間以内に退院可能です。

内視鏡下椎間板摘出手術

 腰部脊柱管狭窄症に対しては、神経の圧迫を取り除く除圧術に内視鏡下手術や顕微鏡手術といった方法で侵襲を少なくする方法があります。また、病気の種類によっては脊椎を固定する必要があり、小さな皮切で筋肉や脊椎骨を術野に展開しない経皮的椎弓根スクリュー法(PPS)による脊椎固定術を行っています。この方法では従来法と比べて出血量を押さえ、手術による身体への負担(小侵襲)を少なくするのが目的です。ただし、手術中にレントゲンの透視装置を使うため術者、助手、看護師は放射線防護のため鉛の服を着て手術に望み、放射線の被曝もするため医師には優しくない手術となります。
 このPPS法に加えて、最近では小侵襲腰椎側方椎体固定(XLIF, OLIF)という最新の方法を行っています。

XLIF

 XLIFとは、側腹部(腸骨と肋骨の間)に約3cm程度の皮膚に小切開を入れ、筋肉を切離、切除せずに椎体の側方から腹膜外アプローチで椎間板を取り除き、ケージといった特殊な挿入物で固定して、脊椎の安定性を高める手術方法です。これまでの手術ではお腹に20cm程度の大きなキズで腹部の筋肉を切離しながら腹膜に到達する必要がありました。術後の疼痛が強く、侵襲も大きく大手術の部類に入っていました。腹部外科で腹腔内を手術する際、この腹筋群を切らずにする方法が腹腔鏡下手術です。このXLIFはお腹は切らずに腹膜外からアプローチします。ここは内視鏡では出来ませんが、特殊な開創器や手術器械を使うので小皮切で行うことができるようになり、出血は少なく術翌日から歩行が可能となりました。日本では2013年から厚労省に使用承認され、一部の認定病院で実施されてきました。このXLIFとPPSを組み合わせと行うことで腰椎の強固な固定と間接除圧を小さな侵襲で行うことが出来ます。PPSのため背部に数箇所の小切開とXLIF用に側腹部に約3cmの皮膚切開(皮切)で手術を実施できます。この手技の最大の利点は、間接除圧と言って脊髄の神経を直接触らないで神経を圧迫から解除する事にあります。神経に直接触らないので脊柱管内の神経に対し安全性が高く、従来の術式で起こっていた術後神経合併症(下肢の運動麻痺など)の危険性が殆どありません。また、出血が従来に比べ非常に少ないなど体への負担が少ない手術方法です。対象となる疾患は、腰部脊柱管狭窄症のなかでも腰椎変性すべり症、腰椎変性側弯症、腰椎後弯症、腰椎分離(すべり)症の一部などです。手術の成績は極めて良好で、術前の腰痛や下肢のしびれはほとんど軽快します。また、出血量が少なく、皮膚の切開も小さいため、術直後の傷の痛みも非常に軽くリハビリも順調に進んでいきます。そのため、これまでの脊椎の固定術が3から4週間程度の入院期間であったのが、半分の10日−14日程度に短縮されました。

術前
術前
術後
術後
術前
術前
術後
術後

 XLIFは全国でも限られた医師と医療機関でのみ実施されており、XLIF専用の手術研修を受けて認定医となる必要があります。また手術には安全性確保のため、XLIF専用の脊髄神経機能のモニタリング装置が必要です。当院では指導医資格を2名が保有し、XLIFを日本導入早期から開始しており手術の安全性向上のため様々な取り組みも行っています。脊柱菅狭窄症以外にもこのXLIFを成人脊柱変形(いわゆる腰曲がりや側弯症)や再手術症例に応用しています。従来方法と比して明らかに小さな侵襲で患者さんの身体への負担も少なく手術成績も良好です。
 腰の症状でお困りでしたら、当院へご相談ください。